「イクラが高いんっだってね~」とお客様からよく聞かれます。
はい、去年の倍以上しいてます。獲れないんです鮭が。。
毎年10月の声を聞くと北海道から鮭の卵「筋子」が入荷し始めます。

出始めの頃はとっても高く、最盛期の11月に入ると入荷量の増加に伴って価格がぐっと落ちてくるんですね。
で、その時期にお客様に沢山楽しんでいただき、同時に沢山仕込んで冷凍庫で保存しておきます。
イクラは比較的冷凍に強いので、こうすることで旬の安くて美味しいイクラを長く楽しんでいただけるわけです。
で、今年は筋子の入荷が全く増えない。増えないどころが最盛期でも入荷が無い日もあり、価格も去年の倍以上してる。
豊洲の仲買さんも
「今年はもうダメっぽいです。鮭が全く獲れてないんです。」
と浮かない表情。
「OK、ならこちらから出向いて旬のイクラをゲットして来よう。」
と計画したのが『新潟で鮭ゲットツーリング』でした。
向かったの鮭の「ウライ漁」で有名な新潟県村上市の三面川(みおもてがわ)。
新潟県北部に位置するこの町は古くから鮭の豊富な漁場として有名で、人々は数百年も昔から鮭と共に暮らしてきました。
鮭の卵(イクラ)は産卵が近づくと皮が固くなり始めます。流れが急な産卵場で小石などが流れてきても簡単に潰れたりしないようにです。
僕ら鮨屋が使うイクラは皮が固くなる前のもの。鮭がまだ海にいるときに漁獲して採取したもので主に北海道産です。なので通常なら川に遡上を始めた鮭の卵は使わないんです。
が、今回はそんなこと言ってられない。ちょっとぐらい固くたって天然遡上の美味しいイクラをお客様に食べていただきたい。
そんな思いからまたまた佐々木くんに連絡、仕事の都合を強引につけてもらって新潟に向けて出発したのでした。
佐々木くんは私鮨武の中学時代からの友人です。鮨武の常連さんでツーリング、魚、漁港、と興味の対象も同じ。このブログでも主に漁港探訪ツーリングには度々登場していますので読んでみてください。
2025年10月29日、午前2:30に都内を出発。
勿論いつものようにバイク2台、ヘルメットに仕込んだ通信マイクでわーわー言いながら深夜の関越道を北上します。
日中はまだ汗ばむほどの陽気でしたがこの日の予想最低気温は6℃、しかも夜半から雨。
予報通り群馬県を越えたあたりから冷たい雨が降り始めました。バイクの気温計は7℃と出ていますが雨の走行風をもろに受ける体感温度はざっと「2℃か3℃か💦」って感じ。
悪天候の長距離ツーリングは二人で何度も経験してきているのでまぁまぁ普通に走りましたが
僕ら二人でなかったら朝までに村上到着は難しかったかもしれません。
まあムリは行けませんね無理は。。
ウライ漁の現場で見た現実
雨と寒さと強風の中夜明けには新潟市街に入り、7時半過ぎに村上市三面川に到着しました。

——しかし。
この日水揚げされた鮭は、わずか2匹。
施設には人影もまばら。
海からの恵みを愛でる空気は微塵もなく漁師さんも無言で「魚がいない」ことを確認するのみ。
辺りにはただ川の流れる音だけが響いていました。

「今年は本当に本当にとれないよ」
言葉にすると簡単ですが、
実際に現地で目の当たりにすると、数字以上に重く感じる光景でした。

僕らが現地に伺ったのは10月の30日。通常10月の1か月間で多い年は5000匹、少ない年でも2000匹は鮭が揚がるのだとか。
「今年はこれまで10本だけだよ」
普通なら
「はるばる東京から走ってきて鮭が買えなかった」
とがっかりするのでしょうが、現地のあまりの状況にそんな気持ちにはなれず
ただただ心配になってしまいました。
「鮭の町村上はどうなるんだろう…。」
どこか元気のない村上市
鮭とともに栄えてきた町。本来ならこの時期は鮭の恵みとそれを買い求める客で大いに賑わっているはず。でも今日の村上市街は本当に静かでした。
鮭が戻らない現実は町の空気そのものに影を落としているように感じました。
せっかく来たからには、村上を観光します。
イヨボヤ会館で鮭文化の歴史を学び、
大洋酒造を見学。
ここで出会ったご縁のおかげで、年末には新酒を取り寄せることもできました。






そして締めは、瀬浪温泉。
日本有数と謳われる歴史ある名湯瀬浪温泉。90度の源泉が湧き出るこの地もかつての賑わいはなく、どこかひっそりとしていました。
冷え切った身体を湯船に沈めてじんわりと溶かしながら、鮭が戻る日が来るのかと考えていました。
地球温暖化、環境破壊。
海水温の上昇が不漁の原因だと概ねわかってはいます。
「自分に何ができるだろう」
寝不足で走ってきたツケで時々ぼーっとなりながら来年、再来年の村上の鮭漁を思います。
鮭が戻る日を願って
「鮭の不漁」というニュースが、
現場ではどれほど深刻かを実感しました。
鮨屋としてイクラは欠かせない存在です。
旬が来て美味しいイクラが入荷してくるその向こうに、自然と向き合う人たちの営みがあります。
季節になれば、川に鮭が満ち、漁師たちの笑顔があふれる日が来ることを願ってやみません。

おまけ


おしまい。










