こんにちは。鮨武です。
今年もまた、北海道・積丹町から極上のウニが届きました。口に含んだ瞬間、繊細な甘みと香りがとろけながら広がりスッと消えてゆきます。
待ち望んだ夏のごちそうの季節到来です。


このウニを届けてくれたのは、私が昨年、積丹町を訪れたことでご縁をいただいた漁師、柏崎祐毅さん。彼が漁をしている海は、まさに私が心を打たれた、あの透き通る積丹ブルーの海です。柏崎さんはウニなどの漁の傍ら、クルーズ船もやっていて毎年沢山のお客様を楽しませています(積丹の海、きれいですよ⇒積丹神威クルーズ 【神威岬を海から望むクルーズ】

その海を守り、ウニ漁の未来を支えているのが、積丹町水産技術指導員の水鳥さんです。
写真は今年の春、水産庁長官賞を受賞された際に鮨武を訪ねてくださった水鳥さんと鮨武です。

積丹の海は見た目こそ美しいものの、実は10年以上前から「磯焼け」と呼ばれる深刻な環境問題を抱えています。積丹のウニの味を決定づける「ホソメコブ」という海藻が消えてしまい、海底が砂と岩だけになってしまうのが磯焼けです。こうなるとウニの味はもちろん、その生存自体が危ぶまれてしまうのです。
積丹のウニは、ホソメコブを食べて育つからこそ、他の海域のウニとは一味違う格別の甘みと繊細さを持てています。
そこで町と水鳥さんらのチームは、ウニの殻に含まれる窒素やリンなどの栄養素に着目。ウニをむいた後に出る殻を粉砕し、環境に優しい天然ゴムに練り込んで、海中に設置するという試験・研究を始めました。これにより、海藻の肥料となる栄養塩がじわじわと海中に溶け出し、ホソメコブの育成に大きな効果があることがわかったのです。
この取り組みは
・ウニ殻(一般廃棄物)の有効活用
・環境への負荷がほぼ無い
・漁業者自身で作成可能
・安価かつ広域で実施が可能
などの点で画期的で上述したとおり『水産庁長官賞』を受賞しました。
今年はその成果が着実に現れ、ホソメコブが見事に茂り、ウニも豊かに育ちました。
目の前のウニを見ながら、彼ら?が食べてくれたホソメコブが揺れる積丹の海を思い浮かべています。
美味しいウニのお鮨を挟んで、こんなストーリをお客さまと共有できたらなといつも思います。
私たち鮨職人が扱う食材は、見えないところで多くの人の知恵と情熱に支えられています。このウニの甘さを感じるたび、その背景をお客様にもお伝えしたいと思わずにはいられません。
この夏には積丹の柏崎さんを訪ねる予定です。
短い北海道の夏。その一瞬の恵みを、ぜひ皆さまにも味わっていただきたいです。

積丹方式の取り組みに関しては、水産庁のリーフレットに詳しいので貼っておきますのでぜひ見てください⇒R2_isoyake_kyogikai-9.pdf