海外就職の現実

「寿司学校を出て海外で働きたいけど、条件の合う店がない。どこか知りませんか?」

という相談を受けることがあります。

私が以前寿司学校で教えていたことをこのサイトなどで知り、相談のメールを送ってくるのです。

私の所にくる「誰か紹介して」という海外寿司店からのオファーは大抵

「現場経験2~3年程度、または調理長クラス」を、という内容です。

未経験で寿司学校を出たばかりの人は残念ながらご紹介できません。

で、メールのやり取りをしてると

「どうしたらいいでしょう?」となる。

この質問に対する私の応えはシンプルです。

「日本で下働きするのと同じことを海外でもやりなさい。」

です。

寿司学校に入学する生徒さんのほとんどは

「海外で働きたい」が志望動機です。

「寿司職人になりたい」と思って学校に入る人は実はあまりいません。

「なぜ海外で働きたいのか」と聞くとほとんどの人が

「日本で働くのは嫌だから」と答えます。

「どうして日本で働くのは嫌なの?」と聞くと

「日本の飲食は厳しい人間関係(職場の先輩)や不当な残業、安い給料でコキ使われるから」なのだそうです。

「だから海外に行きたい、そのために一番の近道が寿司を覚えることなんです」と。

否定はしません。そういう面も確かにありますから。

でも、と思います。

「海外ならそういう嫌なことは本当にないの?誰の情報?自分で調べたの?」と。

海外の飲食店も日本の飲食店も実情はあまり変わらないんです。

ひょっとしたら海外の現場の方が、コンプライアンスに煩い日本の店より厳しいのではないかと思うこともあります。

そう思えるような経験談をこれまで沢山聞いて来ました。

『職人として呼ばれたら、ほとんど何も教わらないまま初日から数時間ロールを巻きっぱなし、定時に現地のアルバイトが帰ったら後の片付けは自分が残業して全部やる。』

『現地の人気店に入ったけど最初はずっと皿洗い。シェフには厳しくされるし言葉も通じない。触らせてもらうのは来る日も来る日もサーモンだけ。』

『歓迎してもらえたのは初日だけであとはずっと働かされっぱなし。確かに現地の人より給料はいいけど日本円に換算したら帰国のチケットも買えない。』

こんな話しばかり、それが普通だと思えるくらいよく聞く内容です。

で、ほうほうの体で帰国して「もう飲食はこりごり」となる。

寿司学校にかけたお金はなんだったのでしょうか。

立派にやって行っている人もいる

どうしたら成功できるのか。

学校を出て、今でもきちんと海外生活を送っている人を何人か知っています。

彼らに共通しているのは

「現状を受け入れる強さ」

です。

「頭の中を文句で一杯にして、クサいツラして働いて、結局半年で限界」

な人が多いなかで、彼ら(女性もいます)はぶーぶー言いながらも置かれた立場で踏ん張り続けたわけです。

そうしているうちに徐々に光が見え始め、辛い中にも楽しさを発見し、いつの間にかその地に根を張ることができていた、ということです。

大金持ちのオーナーが、ろくな仕事もできないあなたの生活を、将来にわたって全面的に面倒見てくれる、そんな出会いに恵まれない、不運なあなたが

夢の海外生活を送って行くには、この逞しさが絶対に不可欠です。

日本と海外の違いを自分の妄想で美化しないことです。

「仕事が厳しいのはどこに行っても同じ」と腹を決めてください。

腹が決まってじっくりと取り組む覚悟ができた人から

夢の実現が現実味を帯びてくると思いますよ。

がんばれ。