鮨屋では川魚はあまり使いません。
サクラマスは川魚のヤマメのことです。
縄張り争いに負けて居場所がなくなったヤマメが住み家を求めて海に下り、やがて大きく成長した個体をサクラマスといいます。
サツキマスは同じことがアマゴで起こったもの。
通常、川に残ったものより大きく育ち、味も脂の乗りも白眉と言えます。
名前の由来はその旬が桜の開花時期と重なることと、秋の産卵期には桜色の婚姻色が現れることからきています。
このヤマメとアマゴ、体側にある赤い斑紋の有無で見分けるのですが、それ以外はとってもそっくりさん。
加えて最近は異種間結婚のハーフもいるそうで中々に見分けが難しいです。
で、サクラマス。
別名本マス。
身は薄いオレンジ色で柔らかく、いい香りと味がします。
ぱっと見はサーモンに似ていますがまったくの別物。
鮨武では養殖の脂ギトギトサーモンは使いませんがサクラマスは探して買います。
サクラマスに養殖はいません。放流はしているようです。
生で食べるときは一度凍らせて使いますが、鮨武ではにぎりの前のおつまみ用で、揚げ物や焼物としてお出しします。
火を通してもぱさぱさせずに柔らかい、ほんわかしたうま味を楽しめる、実力派の春の魚です。
賄い用に頭やアラをこんがり焼いて身をほぐし
炊きたてのご飯に混ぜておにぎりにするのも楽しみの一つ。
写真は2020年3月5日に豊洲で求めたサクラマスです。季節が進むともっと太ったものが出てきます。楽しみです。
川の魚にとって、エサは通常上流から流れてきます。
だからケンカが強い個体ほど上流に陣取ってエサを沢山食べます。
ケンカに負けると下流に下がり、そこでも負けるとさらに下流に下がり…。
最後は海に出ちゃった💦
な人たちがサクラマスです。
頑張って海水でも生きられるように変身して
海でたっぷりエサを食べて大きく成長します。
もとのいじめっ子?の10倍以上の体重になって戻ってくるわけですね。
『負け組が海に落ちて力を蓄え、満を持して威風堂々凱旋してくる。』
そんなストーリーも、この魚が好きな理由かもしれません。