『ウニが苦手』な方からびっくりの質問
衝撃的な展開でした。
先日カウンターに座られた女性のお客様。ウニを食べての感想が
「このウニはどうやって味をつけてるんですか?」と。
「えーとー味つけですか。。んーー酢飯とー。。お醤油とーー。。」
と答えに窮する私。
「そうではなくて、この甘さはどうやってしみ込ませるんですか?漬け込むとかですか?」と。
どうやら真剣です。
「…?」
「ほえ??」
お話を伺ってみるとこの方、子供のころからウニを食べてきたが、どうも苦いし場合によっては臭くて好きではないという。でも周りの人はみんな「ウニは美味しい」と言う。そして
「それは本当に美味しいウニを食べたことがないからだよ」と。
それならとこの女性、お休みの日に築地の場外市場に出かけたのだそうです。そこで彼女はウニ専門店に入ってみたのだそうです。メニューにはいろいろな丼ものがあったそうですが
「ここは失敗したくない」
と一番高いウニ入りの海鮮丼を頼みました。結果は…・
「やっぱりウニが苦くて美味しくなかった」と。
彼女はウニが美味しいとはこの独特の臭いと苦みのことなんだと理解することにしたのだそうです。これは大人の食べ物で、例えばビールの苦さを美味しいというアレだ、と。
天下の築地場外市場の、ウニの専門店で売っているウニがそうなんだから…。
で、鮨武でも「ウニいやだな…」と思いながら食べてみたら思いがけず甘かったので
「これは何か秘密の味付けがあるに違いない」
と、思い切って聞いてみたんだそうです。それにしても凄い発想です、漬け込むって…。
業界よ恥を知ろうぜ
イメージと実態の乖離
天下の築地場外市場。誰だってそこに行けば美味しい海産物がそろっていると思うし、市場側だってそうやってPRしてるでしょ。
『食のプロが仕入れに通う』とかなんとかさ。
ちょっと恥ずかしいよな。もうね、その店に代わって謝っちゃいましたよあたくしゃ。
日常になり過ぎて感覚が麻痺してる
普通にまかり通るウソの数々
天下の築地の専門店、そこの一番高い海鮮丼に苦くて臭いウニを出してしまうその神経はなんなんだ、いいたい。売る側だってちゃんと「不味い」って分かってて売ってるからタチが悪いっての。でもこれってその店だけじゃなく当たり前に蔓延しすぎちゃって皆さま問題視してない感じですね。例えば
●誰も選んでないのに『特選』
●ファックスで業者おまかせ仕入れ、厳選どころかチョイスさえしてない『厳選素材』
●何を基準に言ってるのか分からない『匠の技』『こだわりの逸品』
●美味しそうなメニュー写真みて、頼んでみたら全然違ったなんてもう当たり前になっちゃった。
お前の店は田舎のストリップ小屋かっての。
もうね、誇大広告通り過ぎてウソつきっていうか詐欺じゃねーのかってね。
ある程度客観性のある表示が必要だと思う
ウニもさ、和牛じゃないけどレベル分けしたらいいんだよ。そうすれば、臭いウニを食べても
「レベルCだからこんなもんか」となり
「もっと美味しいウニがあるんだな」ってなるでしょ。少なくともこのお客様みたいに
「ウニとは臭い食べ物です」
みたいな不幸な「ウニ嫌い」は確実に減ると思う。ウニならできると思うんですよ。
ウニは加工品です
ウニは生ものではあるけど立派な加工品。魚は「さばいてみたらハズレだった」はあることだけどウニはカラから実を外した時点で「美味しいウニ」と「残念なウニ」でちゃん別に扱われ勿論、価格帯も味に比例してつけられます。あなたが鮨屋で見るあのウニの箱で安いものは3500円、美味しいもので7万円なんて価格差は普通です。全体の価格の上下動はあっても残念ながら
「安い方が高いやつより美味しかった」
なんて嬉しい誤算はまず起こらないのがウニなんです。
「北海道産バフンウニ」でも苦いのはフツウにある
いい響きですね、「北海道産バフンウニ」でも残念ながら北海道のバフンウニでも苦いやつはフツウにあります。加工業者は分けて商品を作るけど一般消費者は見た目では中々味の優劣までは分からない。だから客観的なレベル分けが必要なの。味を数値化してA~Dの4段階くらいで分けて、あとは加工日だけ大きく書くだけで随分すっきりすると思うんだけどな。
それとこれはウニに限らずだけど、ワインがやってるように、言葉の定義とそれを名のれる基準をはっきりさせればいいと思う。
言葉の定義を決めるべきだ
「特選」と名乗るための基準とか、「厳選素材」を謳うためのルールみたいなね。今は全部売る側が勝手に銘打ってるだけだもん。メニュー写真だって、実際に出てきた料理をメニュー写真と比べるアプリとか作ってさあんまりひどいのはデータを添付して告発しちゃえって思う。買う(食べる)側がへんに大人ぶって忖度してないで
「特選て書いてあるのにおいしくねーぞ」
って言えるようになったらいい。
「特選て書いてあるけどこの値段なら仕方ないよね」
とか
「世の中そういうもんでしょ」
なんて訳知り顔で涼しい顔してるから売る側がどんどんつけ上がるわけ。
「厳選!板長のおまかせランチにぎり 980円」
「北海道直送!特選!北の誉寿司 1580円」なんてね(架空の商品と価格です。実在の物とは無関係です。)
で、食べるのが辛いようなダメダメなお寿司が出てきちゃったらさ『どこがどう厳選なのか説明してみろゴルァ』
って言うべきなんだと思う。値段が高いか安いかなんて関係ない
「商品にそぐわない言葉遊びでお客様をだますな」と言いたい。
魚業界は特にこの「消費者のご理解」に甘えてるというか消費者をなめてる感じが強くてそこは嫌いな部分。大体、産地からしてその詐称や密漁を終わらせられないしそこに乗っかる業者は
「売れればいい、売れるコピー最高♡」
な風土でしょ。我々飲食店や小売店も「わかりゃしない、言ったもん勝ち」な空気にどっぷり。それを消費者が
「わかったふり、見ないふり」
で大人しく支えてるんだからそりゃ変わらないよな。
不幸な魚嫌いをなくしたい
『ウニの味付け』の疑問から話が広がっちゃったけど、こういう、ある意味不幸な疑問が、多分いたる所にころがってるわけ。「北海道にカニ食べに行ったけど美味しくなかった。」とかさ。冷凍と解凍を何度も繰り返してたり、そもそも鮮度落ちのカニを仕入れて茹でてたりさ。それを隠して
「本場!北海道の極上茹で上げ蟹!!」なんてノボリだして売ってるんだもの。
まじめにやってる北海道のカニ屋が聞いたら泣くってか怒るでしょ。それは元はと言えば、旨くもない、良くもないものを『旨いです、最高です』とウソつきまくって売ってきた連中とそれを止められない業界側に責任があるんだと思う。そうやって不味い魚を食べさせられて「魚離れ」や「魚嫌い」がでちゃったら、売ろう売ろうと頑張ってるつもりが結果として自分たちの首を絞めてるんだってことに気付くべきなんだよな。
【2025年9月5日 内容を加筆・修正いたしました】