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寿司職人に女性が少ないのはなぜですか?

――QUORAに勝手に答える第五弾――

寿司職人に女性が少ないのはなぜですか?

これもカウンターのお客様がよく話している話題ですね。

  1. 女性は体温が高いので生の魚を扱うのに適していないから
  2. 女性は生理があり気分に波があるので均一な仕事ができないから
  3. 単に女性蔑視の歴史の断片だ
  4. 結婚して子供が生まれると、育児との両立が難しいから

まぁ、どなた様でもこんな感じの内容で会話は流れていくようです。

特に3、「単なる女性蔑視」ここから生まれる職場のネガティブな空気感と周りからの無遠慮な言葉の暴力でやる気を失った方もいたに違いないと想像できます。

でも、私は鮨業界に女性が少ない一番大きな原因は

「男性との体力差で疲れ果ててしまうから」

なのではないかと思っています。

鮨屋の仕事は力仕事の連続

「鮨職人ってまな板の前でお鮨を握る仕事」と思っている人は、実感としてかなり多いです。

”鮨のにぎり方”を覚えようと、寿司学校に入学する人が沢山いることでもそれがうかがえます。

「鮨をにぎる」という仕事は鮨屋全体の仕事のなかでは一部でしかありません。「鮨のにぎり方」を覚えるだけでは鮨屋をまわすことはできないです。

「鮨をにぎる」前に、店を掃除し、魚を仕込み(買い出しに行き)、道具を整え、シャリを炊き、玉子を焼き、と書ききれないほどの準備があり、そのどれもが経験を積まなければ身につかないものです。

魚の仕込みを覚えるのだって、その前に魚と氷がぎっちり入った20㎏にもなる発泡箱を運ぶ必要があったり、大きなまな板を洗うのにも力を込めて洗わないと魚の汚れは落ちません。

体格が大きく腕力がある人の仕事のペースに非力な女性がついていくのはとても大変なことです。

そして現場で評価されるのは例外なく仕事が早い人です。

魚を切り付けてお鮨を提供するだけなら、手先が器用で細かい作業が得意な女性は有利なのかもしれないけど、そこに行くまでの行程で結構なハンデを乗り越える必要があるわけです。

寿司職人に求められる”動き”

東京都心の繁華街に女性だけで運営している寿司屋があります。何年か前に私も行ってみたことがありますが、とにかく仕事が遅いのが気になりました。

注文が増えてくると手元(まな板の上など)は散らかり、動きの無駄が目立ち、商品は一向に出てこない。

訓練された職人の動きでないことは同業者でなくてもすぐに分かります。

ただ、カウンターの常連と思しきお客様はその辺はあまり気にしてない様子で、むしろ「一生懸命に頑張る女の子を応援してあげたい」という感覚で店に通っているのが、聞こえてくる会話からもわかりました。ですのでこの店はそれでいいのでしょう。

鮨職人という仕事は、動きを見られる(見てもらう)ことも仕事のうちですし、お客様は職人の無駄のない動きや、正確な手元を見て、「あぁ、いいなぁ」と思うものです。

それを見るのもカウンターで鮨を食べる醍醐味の一つなのです。

厨房で作った料理をホール係が運んでくれるスタイルのレストランでは、調理の作業工程は見ることができません。

大きな違いです。

修業時代に「速く」「正確に」仕事をするようにしつこくしつこく言われ、そうありたいと日々頑張ることで、こういった身のこなしが身についてきます。

「か弱い女の子ががんばっている」ことを売りにするのでなければ、女性職人も「早く」「正確に」を見につけなければいけません。

ここでもやはり体力がある男性が有利ということになってしまいます。

せっかく修業時代を乗り越えても…。

体力的なハンデにも負けず、立派に職人になっても、いわれのない差別発言に嫌気がさして辞めてしまった人もいたことでしょう。

時に同僚から、時にお客さまから、心ない一言に傷つくことは多いものです。

「やっぱり鮨はイキのいい男の職人に握ってもらった方が美味しい」みたいなやつ。

女性はイキ(活き、粋、意気)が悪いのか?

そう思うとしたらそれは「女性は男性を立てるもの」という社会の歴史の刷り込みに自分が染まっていないか考えるチャンスです。

「今日はなにがいいの?」

「今日は〇〇と△△がいいですよ!」

「じゃあそれにぎって」

「はいよ!」

という会話からイメージが浮かぶのは「男の職人とお客様」という図ですね。

職人が女性にかわると「何となくしっくりこない感じ」と思う方は多いと思います。

「鮨職人と言えば元気のいい男のイメージ」という「刷り込み」のせいでしょう。

わかります。でももう変わっていかないといけない。

なぜ女性がつけ場で握っていると「違和感がある」のでしょう?

どんな理由でしょうか?

「女性」の部分を「黒人」に変えたらどう感じますか?

「女がにぎった鮨は何となく美味しく感じない」

という発言がどれくらいキケンなものかイメージできる気がします。

「やっぱり酒は女の子に注いでもらうと美味しく感じる」

など、一見逆の内容に見える発言も根は同じ。

持ち上げているようで実は強烈な男性優位の感覚が漂っています。

世の中に(おそらく女性の側にも)ありがちなこういった刷り込み自体をきちんと意識していくことで、女性鮨職人も沢山生まれてくるような気がします。

誰もが陥る罠に気を付けよう

「一生懸命にやっているし、自分の仕事がほかの男性職人に負けているとは思えない」のに、女だというだけでお客様や同僚から不当に低く評価されてやる気をそがれる。

そんな経験をした女性鮨職人も沢山いらっしゃると思います。

誰だって自分の努力や意気込みを正当に評価されなければ悔しいものです。

特に男性の仕事と思われてきた鮨職人の世界で女性がのし上がっていくには、並大抵の情熱ではできないことです。

「それなのに正当に自分を見てもらえない」

そうだとしたら本当にやりきれない気持ちになってしまいますね。

でもですね

これは自分を成長させるために一生持っていなければならない

言ってみれば一番大切な部分だと思っているのだけど

『他人から半人前という評価をされたなら、それは自分が半人前だからに他ならない』

と思わなければいけません。

そう言い聞かせて自分を奮い立たせる心の持ち方に男女の区別はありません。

そして男女の区別なく、人間は得てして自分を高く評価しがちです。

でも恐らく他人がしてくれた評価が今のあなたの真の姿です。

女性であるがゆえに味わってきた悔しい思いと、自分の力量が「まだまだ」であることを指摘されたショックを混同してはいけません。

悔しい思いをした時も、どうか負けないで今の精進を続けてください。

鮨業界にも女性の力が必要です

鮨職人の成り手が減っています。

もうね、業界全体で人手不足。

男だ女だって論拠不明なことを言っている場合ではない状況のようです。

担い手が減っていく業界が今後発展するとは思えません。

鮨は伝統工芸でも芸術でもなく、おらが街に当たり前に存在するものです。

もっと沢山の人が鮨職人を目指しても私は何ら不思議に思いません。

だっていい仕事だもん鮨職人。

私は生まれ変わってもまた鮨職人になりたいと思っています。鮨の仕事はそれほど楽しく面白いです。

鮨を食べる時間は単なる食事ではなく、友人や家族との特別な、ハレの時間を持つことであり、日本魚食文化の象徴に触れる瞬間であり、祖先たちの努力と叡智に想いを馳せるときであり

『うんっまいなぁーーーー!!』と喜びをかみしめる時間です。

それをたった一人でお客様に提供できるのが鮨職人であり、同時にきちんと家族を養う収入を得られる仕事です。

「旨い鮨」への答えは簡単に辿り着けるはずもなく、訓練と探求はおそらく死ぬまで続き、新しい発見を得たときの驚きと喜びは繰り返しあなたに仕事への喜びをもたらします。

一生をかける価値があるのが鮨職人という仕事なのです。

また話がずれた

「なぜ女性鮨職人が少ないか」という問いに答えるための投稿が思わぬ鮨職人賛歌になってしまいました。

全国の女性鮨職人の皆様の幸せと、それに続く女性鮨職人が数多く生まれますように、私も微力ながら応援していきたいと思っています。

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