◆ミョウバン入りのウニは不味いか。
「ウニってあのミョウバンの味が嫌い。北海道で食べたミョウバンが入ってないウニの味が忘れられない。」
カウンターでけっこうよく聞く会話です。
「ウニはミョウバンが入ると不味くなる」
これ全く外れではありませんが決して正しくありません。
確かにミョウバンを使うことでウニの味を悪くすることがあります。逆によくすることはできません。
ではなぜミョウバンを使うのか。
簡単に言えばウニの身が「溶ける」のを防ぐためです。
ウニは鮮度が落ちるにしたがって身が溶け始めるんです。溶けたウニは味が著しく落ちます。なので売れない。売れないと困るから溶けないようにミョウバンで固める。さらに味が悪くなる。
まぁこんなループだと思ってください。
◆以下は『美味しい(甘い)ウニの条件』です。すべてそろっている必要があります。
- ①ウニ自体の味がよいこと。
- ②鮮度のいいうちに製品化している。 (殻を割った時点で身が溶け始めているウニもあるのです)
- ③鮮度が落ちないうちにあなたの口に入っている。
- ④ミョウバンを使っていないか、その使用量が少ない。
◆以下は『美味しくない(苦い・くさい・渋い)ウニ』の条件です。どれか1つでも当てはまるとこれになります。
- ⑤(海の中にいるときから)そのウニ自体が味が悪い。
- ⑥死んで味が落ちたウニを加工したか、流通の過程で鮮度が落ちた。
- ⑦ミョウバンの使い過ぎ
◆「美味しいウニ」は狭き門
①と⑤を分ける最大の要因はエサです。良質の昆布をエサにしていることが求められます。北海道をぐるっと回る産地のウニが質がいい(可能性が高い)のは昆布(エサ)がいいからです。
ウニは雑食性で何でも食べます。昆布がない海域では岩に着いた藻や死んだ魚もウニのエサです。ホンダワラなどの海藻ももちろんエサにします。でもその味は昆布を食べたウニには遠く及ばないどころか、食べた瞬間吐き出したくなるような味のウニもいるのです。生きているウニをその場で食べても、です。
美味しいウニであるためには①~④全ての条件が整っていなくてはなりません。逆に⑤~⑦の一つでもあるとそのウニは不味くなってしまうのです。
◆ミョウバン不使用でも美味しくないウニ。。。
①~③の条件が整っていなければ当然ミョウバン不使用でも嫌な味のウニになってしまいます。ミョウバンを使っていないことがウニの質を保証するものではないのです。最近ではパッケージにでかでかと”無添加”とやって売りにしているウニもありますが(塩水ものに多い)、品質にムラがあって結構ばくちですね。
ミョウバンはウニの溶けを止めるために用います。 鮮度が落ちたウニは溶けてしまいますが、「これを止めたい」というのがミョウバンを使う理由です。
問題は使う量です。多いと渋みが出ます。
上質なウニを仕入れて大人数で一気に加工すれば仕事がスピーディになり、原料の鮮度落ちを防げます。ミョウバンの使用量も最小限にできますので、未使用のウニと味の違いはありません。 当然かかるコストは価格の上昇を招きます。
高級鮨屋でよく見る加工会社のウニはどこもミョウバンの使い方がとても上手。とっても甘くて雑味がありません。まぁ価格も高止まりしたままです。
「んーー!やっぱりミョウバンがないウニって甘くて美味しい。全然違う」とお客様が喜ぶウニでも、実は結構な確率でミョウバンが使われていたりするもんです。
鮨武ではミョウバンの有無ではなく、信頼できる会社のウニを高鮮度で仕入れをすることでいつも納得の美味しさを維持しています。