海老おぼろのおはなし

「海老おぼろ」と言います。

「サクラデンブ」でも「海老そぼろ」でもありませんよ、『海老おぼろ』です。

いえね、名前の由来なんざ追いかけていくと

地方だ地域だ料理法だっていろいろ出てきて最後には

「よくわからない」

ってことになるんで

「別にどう呼んだっていーじゃねーか」とも言えますけどもね

なんか座りが悪いんですよ

だからこれはどうしても海老おぼろですはいw

海老をゆでて殻をむき、すりつぶしてお砂糖やらを加え

鍋で乾煎りして水分を飛ばして作ります。

上の写真は鍋で乾煎りしてるところです、簡単です。

玉子のにぎりでシャリと玉子の間に挟んで握ります。

先代から聞いた話しでは

『昔は小肌でもアジでも今よりも強く締めていたんだ。これを、砂糖が入ってないウチのシャリで握ると、場合によっちゃぁ酸っぱすぎちまう。そこへもってきてこのオボロを間に挟んで握るとな、酸っぱいのと甘いのが上手くまじりあって、ちょうどいい塩梅になったもんだ。特にキスのにぎりなんてのは、透明なキスの下に緑のワサビと桃色のオボロが透けて見えてそりゃ上品なもんだった』

ってことですね。

まぁ元をたどれば、悪くなりかけの海老を

「どうやって再利用するか」

って辺りから出来上がったものなんだろうと思うけどさ

これも鮨ってものの一つの文化ですね。

で、このオボロを挟んだ玉子焼き

黙ってお出ししただけだとお客様が独自の解釈をすることがあるので注意が必要です。

「この玉子焼き面白い。シャケフレークが入ってる」

「あ、こちらは海老おぼろと言いまして(以下ご説明)」

「これなに?明太子入り。」

「あ、こちらは海老おぼろと申しまして(以下ご説明)」

「何か挟まってる?」

「海老おぼろです💦」

「さくらでん…」

「違います海老おぼろです。」

「面白い、ピンクの鶏そぼr」

「海老おぼろですから!!」

「へ~創作鮨?上から見えてるの何?」

「海老おぼろ!」

「タマゴボーロ?」

「全然ちげーよ、海老おぼろだっての」

とまぁこんな感じです(ウソです)

最近は油抜きした魚のすり身に色をつけた「なんちゃって海老おぼろ」もありますね。

ご丁寧に海老のエキスを配合してあります。

何れにしても新進の鮨屋ではあまり使わない食材の一つになってるのかも知れません。

しかも自分の手で作ってるって言ったら大分少数派かもしれません。

20年くらい前までは

「オボロ、巻いて、山葵入れてね」

なんてお客様もちょいちょいいらっしゃいました。

鮨武のシャリに合うように作った海老おぼろ。

太巻きにチラシに必要不可欠、名わき役とはこのことですな。

今日はおしまいです。