煮切り(お醤油)
鮨屋では「ムラサキ」と言ったりします。
よく混同されますが穴子に着けるのは「ニツメ(煮詰め)」です。
穴子の煮汁を煮詰めるからニツメ。
「煮切り」はお醤油を一旦火にかけて灰汁を引き、角を丸めてあるものを言います。
店によって味は様々。
普通のお醤油をそのまま使っていたり、味の素を入れたり、鰹節で調整した土佐醤油を煮切りとして使っていたりします。
どれが正解ということでもないでしょう、その店で工夫していけばよろしいかと。
普通にスーパーで売ってる醤油でもいいですが、このままだと少々角があるので一度火にかけ、みりんを加えて灰汁を引きます。(これを煮切ると言います。)
香りと味はちょっとだけ控えめ。
この「醤油だけではちょっと物足りないかも」が勘所。
シャリや魚、ワサビと協力して一つの完成された味わいを作り出してくれます。
脇役に主役級の個性を持たせるとバランスが崩れる、というわけです。
だから煮切りにはとびっきりの風味や、深いコクや旨みは持たせません。
ただし、「旨いなぁ」と思わず言ってしまう”加減”は加えます。
「あなたの鮨は・・・べつに普通なんだけど・・・妙に美味いなぁ・・・。」
常連さんのこの言葉を聞くと鮨武は心の中でニヤッと笑うわけです。