「なんでカリフォルニアロールをおかないの?」
NY在住のアメリカ人のお客様との会話。
お客様「あなたはカリフォルニアロール知ってる?美味しいと思う?」
あたし「はい、知ってますよ、あれはあれで美味しいと思いました。」
お客様「じゃあなぜこの店で売らないの?」と結構な真顔で聞かれました。
わおーー、そうきましたか。。
少し考えたあと、私の答えは
「NYの美味しいステーキ店に行ってハンバーガーは食べたくないでしょ。ステーキ店に行ったら美味しいステーキを食べたい。カリフォルニアロールは私にとってはハンバーガーみたいなものなので。」
正確には少し違うけどその場でアメリカ人にわかりやすく説明する自信がなかったのでこんな答えになりました。
それからひとしきり日本の鮨とアメリカのSUSHIの違いについて話しました。
味付けと食材の組み合わせのSUSHI.
「素材そのものが先ず美味しい」ことが大前提の日本の鮨に対して、海外で手に入る冷凍食材は、そもそも味がないのではないか、ということ。
素材に味がないのでソースやスパイスで味をつけなきゃいけない。
海外で食事をした経験のある日本人には頷ける方も多いんじゃないですかね。まぁ日本にだって激安マグロなんかでは物凄く水っぽいというか味がないのがありますけどもね。
それだけでは美味しくない素材を美味しく食べるためには、調味料で味を後付けしなきゃならない。
結局海外では、調味料や食材を、いかに組み合わせるかの勝負になってくるんじゃないかとね。それが海外のSUSHI。
組み合わせの自由度が高い「ロールタイプ」が多くなり、マグロやサーモン、エビなどの海産物も味がしない生の状態よりも、揚げたりスパイスに漬けたりという”工夫”が多くなるのも頷けると。
素材の味を引き出す職人の技術が試される日本の鮨
日本では真逆で、素材そのものの美味しさが勝負になる。
それには「味のいい魚」を選ぶ目がまず必要で、その魚が美味しい時季も知ってなきゃいけない。仕入れた魚を美味しく下す包丁の技術や、下した魚の本来の甘みを引き出す保存の知識や、そのための手間を惜しまない(めんどくさがらない)気持ちの充実も大切な要素です。
それでも魚の旨味(甘味)はデリケートなもの。マヨネーズやホットスパイスなんかくっつけた日にゃ一発でとんでっちゃう。
当然の結果として、「なるべく余計なものを着けずに味わう」必要が出てくるわけで、その形もシンプルなにぎりのスタイルになっていく。
全く別物、例えるならロールSUSHIは洋食なのではないか。バターやニンニクやマヨネーズで味をつけ、揚げたりソテーしたりの洋食。洋食を和食の店に置かないのは当然なのではないか。
ということになったのです。
両者は別物。日本の鮨屋にロールSUSHIはない。
まったく違うものなので、これはもうどっちが本家とかそういう問題じゃない。
最初に説明した「ステーキとハンバーガー」なんて兄弟みたいな関係ではなく、全くの別ものなので、うちの店ではカリフォルニアロールは置かないんですよ、という結論になったのでした。
同伴の方の適切な通訳もあって、NYで会社を経営しているこの方もどうやら納得していただいたようでした。
そのあとは白身のにぎりや赤身のにぎりを、一生懸命味を感じながら食べてくれ、「本当に美味しかった。人生で一番おいしかった」と喜んで帰って行かれたのでした。
いや~、びっくりしたけど海外の方と一緒に、日本の鮨とアメリカのSUSHIの違いを考えるなんてとてもいい機会に恵まれたのでした。
最近は外国の方でも日本本来の鮨の味を愛でる方が増えてきてますね。ですのでやはりうちではカリフォルニアロールはやらないでいようと思います。
ありがとうございました。