シラスの季節ですね。
名産地の相模湾では3月の声を聞くと順次解禁となり市場に出回り始めます。
取れたてのシラスは透明感のある銀白色の小さな体と、キラキラ輝く瞳が本当にきれいです。

一時間前に水揚げされた三浦半島佐島の生シラス

生シラスと言うと「ねっとりしていてほろ苦い」という印象をお持ちの方も多いと思いますが、とれたてのシラスはパリパリとした歯ごたえがあり、苦さはほとんどありません。

神奈川県佐島港に仕入に行って運よく手に入るとその日のお客様にお出ししますが、鮮度の落ちが非常に早く、夕方には何となく輝きを失いはじめ、翌日には「ねっとりほろ苦い」いつもの生シラスになってしまいます。

これほど繊細で優美なものはちょっと思い浮かばないです。

最近見過ごせないニュースを目にしました。

『シラスの中にフグの稚魚が混入していた!一大事だ!!!!』ってやつ。

出た出た、来ましたよーー、と思いながら読み進めてみると案の定、
「〇〇漁港で水揚げ、釜茹でしたシラスに体長1㎝~1.5㎝のフグとみられる魚が複数”混入”していたことが、消費者からの通報で明らかになり、製造元では再発防止に努めると陳謝した。漁業関係者によると、『フグは猛毒を持っている可能性があるので見つけても絶対に食べないでほしい』とのこと。」ってね。

タチのわるい記事だなと思う。その漁業関係者たちが毎日バリバリ食べてるっての。

ていうか肝心のふぐ調理師協会の公式コメントをとってきて載せろや。

私もフグ免許もってますけどもね、シラスに紛れてる1㎝のフグなんて50匹集めて丸呑みしても大丈夫だっての。そりゃ1000匹集めたら小さなお子さんにはちょっと怖いけどさ、だいたいそんなに入ってないでしょ。
「意識してフグだけかき集めてどんぶりいっぱい食べるようなことしなければ大丈夫です。常識的に食べてください。お手数おかけします」でいいし、それじゃ軽すぎるってなら

「フグは毒があるので気になる方もいるでしょうが、このサイズのフグはたとえ毒がある個体でもシラスに混ざってる程度なら問題ありません」

と正しい知識を啓蒙すればいい。それがメディアの仕事と私は思う。

実際に厚生労働省も2014年と古い調査ではあるが同事例に対して「混入しているフグの毒性は定量下限値未満なので問題ない」とコメントしてます。

知識のない人を不安に陥れて注目を集めたいのか知らないけど、この手の記事って本当に誰の利益にもならない。そりゃ製造元は謝るよ、でも仕方なくだよ。
「アホか、いやなら食うな」って言えないでしょ、それがわかってて記事にしてるのが気に入らねぇ。

子供のころ、シラスにちっちゃなタコやイカの赤ちゃんがいてご飯食べながら喜んで探した人も多いはず。今は見ないでしょ。当時、フグやその他食用にしない魚たちのチビちゃんも入ってたはずでさ、何か健康被害がありましたか?っての。

しかも「混入」ってなんだよ。シラスとほかの魚たちはもともと「混在」しててそれが正しい姿なのさ。どっかの牛丼屋の味噌汁じゃあるまいし、人為的なミスみたいに言わないでもらいたいもんだよな。

今のシラスにイカやタコやカニの幼魚が入ってないのはね、そう言った分からず屋の人たちが「異物が入ってます!イブツですイブツです」ってでかい声で騒ぐから、人のいい生産者が一生懸命シラス以外の生き物を取り除いてるんですよ。
本来必要がないそんな作業にたくさんの人が関わって時間と資源を無駄にしてる。

食べても問題ないし、見つけたら可愛いし、子供達には海の豊かさや生命の力強さを教えるいいチャンスなのに、だよ。

誰も言わないから言うけどさ

「いやなら箸でどかせばいいし、細かいことでガタガタ騒ぐな」って。
食べたくなけりゃ食べなきゃいいから、頼むから黙っててくれっての。

ぷんぷん=3