これとっても多くの方に質問されます。最近は日本以外の国のお客様も沢山ご来店いただいていますが半数くらいの方がこの質問をされますね。
シンプルなようでいてきちんと答えるには多少の説明が必要な質問です。
一人前の鮨職人ってどんなん?
まずここを定義しないといけません。
私が考える一人前の鮨職人とはですね
行きますよ?
「その日に合わせた的確な仕入れができ、仕入れた食材を迅速に仕込み、適切に保管しロスを出さない。味覚が敏感で食材のコンディションを瞬時に見分け、状況に応じた調理技術を持っている。包丁とにぎりの技術は正確無比で、握るネタや、食べるお客様の様子で鮨の質感を自由自在に変え、飲み物に合うおつまみもサッと作れる。全てのお客様の志向にジャストフィットな鮨を完璧に提供し、掃除を含めて仕事には厳しく真面目にこなす一方で、人柄はあくまで柔和で気分の波がなく、控え目で虚勢を張らずいつもにこやかで、努力と勉強を惜しまない強さもある。お客様の顔と名前は必ず覚え、状況に応じた言葉をきちんと扱える一方で、場を和ませる軽い話術もある。若手後輩の育成に熱心で、共に歩み且つその成長をじっくりと待ってあげる忍耐力があり、数字につよく経営者としての手腕があり、店舗の利益はきちんと出し、自分と家族の将来をきちんと支える責任感と能力があること。」
書いてて思いましたが宮沢賢治さんの詩に似たものがありましたね…雨にも負けず…。
一気に読むには呼吸が続きません。
どんだけ聖人君子だよ、スーパーマンか!なれるわけねーだろ。
なれるわけないけど目指すべき姿
そうです、完璧になるって本当に難しい。
でもね、逆からみるとどれも本当に大切な要素だと。
- 腕はいいけど仕事に無駄が多くて利益が出せない
- 鮨は美味しいけど不愛想、客の前で若手を罵倒して気分が悪い
- 安くて美味しくて量が多くてサービスが良かったのに2年で潰れた
- 人柄は良いのかもしれないけど店が汚くて…。
- 店と白衣と器と包丁はカッコいいけどお鮨は別にフツウ
- なんか知らないけどとにかく鮨が出てくるのが遅いんだよー
あるでしょ、あるでしょ、あなたの近くにこんな鮨屋
最初の1つだけはお客様からは見えない部分ですけどね。
お客さまは「きちんとしてる」とこにはあまり気付かないけど
「きちんとしてない」ところにはちゃんと気が付くもの。
鮨店を司る鮨職人はそういった
「マイナス評価を受ける要素」を完全に無くせないといけない。
その上で(商売である以上←ここ大事)利益を出し、若手を成長させ
自分の家族も養っていける手取りを稼ぎ出さなければならない。
それができて初めて「一人前」ってことになるんだろうなと。
一人前…いつなれるか分からない
なので、質問の答えは
「一人前なんて自分はなったことないし、いつなれるのか見当もつかないので分からない」
ってことになるわけです。
本当にこれが本心、日々努力するのみ。
でもまぁこういうのを「身もふたもない答え」と言うわけで
こんなことを大真面目にやられた日には聞いた相手は
口開けたまま3秒くらい動きがとまったあと
「そ…そうなんですね…。」
で会話終了、ドン引き必至、なので
「まぁ早い人で3年、一般的にはやっぱり10年くらいですかね」
なんてフツウのお答えになるわけです。
さ、掃除しよ。