もうすっかり恒例になりました、初競りでの狂乱価格マグロ。
マグロに限らずですが魚のセリは1尾とか1匹ではなく、「キロあたりいくら」で決めます。
今年、2020年では72万円/㎏、当該マグロの重さが278㎏なのでマグロ1尾が1億9000万円ということになりました。
史上最高額だった去年はキロ当たり120万円、1尾で3億3300万円でしたので安く感じてしまいますが安いわけないですね。消費税だけでベンツ買えちゃいます(笑)
通常マグロ1本を買うと握りにできる身は魚全体の重さに対して50%程度です。魚体の半分は骨や皮、どでかい頭などでにぎりには使えません。マグロは内臓とエラを抜いた重さで計りますが、抜いてない場合、歩留まりはさらに悪くなります。
で、使える部分が赤身やトロに分かれてくるのですが
そこはさておき今回のマグロ、
1貫10gと小さめに切りつけても原価は14,400円となります。15gなら21,600円ですね、原価ですよ。
すし店の一般的な原価率40%で販売すると1貫54,000円となりますね。
「そんな高いマグロで利益でるんですか?」ってよくお客様に聞かれます。
「出るわけないです」
1貫54,000円のマグロを「食べてみたい」という酔狂な人もいるとは思いますが、まぁそうなるとすしざんまいの商売とは違いますね、当たり前ですが…。
第一、その価値はありません。ここきっぱり。いや、美味しいですよ、間違いなく。歓声か感嘆か、思わず声も出ちゃうでしょう、それくらいの価値はあります。
でもまぁせいぜい5000円~10,000円でしょうね、一貫。
で、それくらいなら銀座の鮨屋で普通にやってるでしょうから、まぁこの鮪もそのくらいのマグロです。
獲れた時期(初競りの時)とサイズ(まずは大きい方がいい)、そして少しの質の良さで”ターゲット”にされた(してくれた、かな漁師さんにとっては)だけです。
2週間早いと同じ質のマグロが十分の一以下で競り落とされてしまいます。
今「ターゲット」と書きました。
そう、「どのマグロで今年のニュースを作るか」は予め決められてます。今年は東一の1番、と画面で見えました。
そりゃそうです。2億や3億で1本買うなら、5000万で全部買ったほうが商売的にもいいです。
でもそれをやると相場が滅茶苦茶になるし、商道徳にも反する。
だから、どうせやるならどのマグロでやるか決めとかないと他のマグロ屋が混乱するわけです。いい迷惑。
凄くいいマグロを皆で競ってるうちにどんどん値が上がってついに70万超え、ということではなく、「この鮪で今年はやり合うよー、他の人はめんどくさいから入らないでね」ってみんな最初から(早い年には前年の暮れから)知ってるわけ。
出来レースとまでは言わないけど、一般の方が思うイメージとは少々違ってるかもしれませんね。
すしざんまいの内部を正確に知っているわけではありませんが、何度か行った限りでは、すしざんまいでは通常は養殖のマグロを使ってますね。天然のマグロを出してもらったことは一度もありません。夏場の国産本鮪がちょっとだけ安い時期でも養殖マグロでした。(ただタイミングが悪かっただけかもしれないけど。)
以前松方弘樹さんが5月に300㎏超を釣ったときはやはりすしざんまいが買ってます(キロ6000円とお買い得価格)から、養殖オンリーではないかもしれないけどまぁ通常営業では養殖マグロなのでしょう。
それでもテレビで初競りの様子を見ている一般の方には「すしざんまいと言えば大間の本鮪」と刷り込みが行われますので、15秒のCMを何本か作るよりは宣伝効果は高いでしょうね。
彼らの名誉のために付け加えると、「うちでは必ず天然本鮪を使ってます」とは一言も発表してませんから、消費者を騙していることにはならないですよ。この点木村社長の良識がうかがえて私は好きですねこの方。
それにしてもどんな科目で落とすんだろう、やっぱり原材料費かな、それとも宣伝広告費?どちらにしても節税を兼ねてるでしょうから両方に効果は高いでしょうね。
ありがとうございました。今年もよろしくお願いいたします。2020年1月