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何故海産物だけ「天然」が「養殖」より高く評価されるのでしょうか?

Quoraに勝手に答えるシリーズ 第4弾

一人で勝手にシリーズ化してますこの企画。今回選んだのはこの質問。長すぎたので途中で切ってるけど、実際には以下の文も題に入ってます。

『脂のりがよく形も綺麗で輸送も完璧な「養殖」は、どこで何を食べているか分からない肉で言えばジビエである「天然」より高品質だと思いませんか?』

https://qr.ae/pN9dHo

『養殖のほうが品質は上なのにこの評価はおかしくねーか?』ってことですね。

看過できないご質問ですぞこれは。

で、Quoraでの答えの傾向としては真っ二つで押し合いへし合いの様相です。

1つは「んなこたぁない、やっぱり天然が上」派の方々。

この方々は「エサ」と「運動量」への言及が多いです。

『配合飼料などのエサを与えるために身の味や香りによくない影響を与える』(要約)

『せまい生け簀で育てるので運動量が少なく身に締まりがない』(要約)

だから天然ものが上なのだ、との意見ですね。ふむふむ。

片や『どっちでも味に変わりはない』または『養殖の方が上』という方々のご意見。

こちらの方は「なのに天然の方が上となっているのは〇〇という理由があるから」という内容です。〇〇の部分が以下の感じ。

『日本人は自然を好むので、自然の中で育った方を上とする傾向があるから』

『養殖の方が脂がのってるのに、天然ものの方が上だ、というイメージが定着してしまっているだけ』

『最近は柑橘の香りがする養殖魚などがあるのにその良さが伝わっていない』

『養殖ものは「まがい物だ」という固定観念から脱却できないから』

ということらしく、なかには

『養殖の技術は発達してきているのに昔の考えが抜けないから。老害とはそういうものだ。高価な天然ものを食べられる自分はすごい、という自信。「美味しんぼ」の弊害だ。』(要約)

ってのも飛び出してきて結構スリリング♡

で、私のこたえ。

『天然が上なのでその評価は真っ当です。』

なぜそうなるかというと

単に市場の原理が働いてるだけ

なのです。

養殖の方が高品質だと市場(イチバだけでなく、一般消費者も含む)が感じていたら、そっちの方が高く売れるんだから値もつくはず。値がついてないってことはそう言う評価だということ。

と、一般論をぶっても面白くも何ともない。

「つまんねー野郎だな鮨武」って言われる前にアタシの個人的な感想を。

養殖魚共通のあの味が…。

養殖魚には共通の味があります。これはもう鯛でもハマチでも勘八でも平目でもアジでもサバでもマグロでも全部同じ。それぞれの魚の味にまぎれて、共通の「養殖魚の味」が入ってる。

多分エサが原因。

煮ても焼いても消えません。食べた瞬間ではなく、噛んでると口や鼻にふわッときます。

半面、天然魚にはある「うま味」や「甘さ」は感じられない。

感じられないどころか、口のなかで美味しさを探していたら「あの味」がウワーって上がってくるので、虚を突かれて一瞬口が止まっちまうことも。ひどい時は瞬間的に口呼吸に切り替えて速攻で飲み込み目の前の飲み物を軽く一気。

もう本当に勘弁してほしい。それくらい強烈。

だけど、「そう?それほど?」という人のほうが、実感としては圧倒的に多いんだよなぁ。なんでだろうと思う。

それほど繊細は話ではないんだけどな。

我々みたいな仕事をしてないと、魚ってそれほど毎日食べないから、気にならないのかも。でも絶対いつか気づく。一旦気づいてしまったら後にはもどれません。

かくいうアタシも最初からそうだったのではなく、この仕事をはじめて1~2年後くらいから徐々に気になりだした感じだったから。

ただ、ちゃんと探せば「そういう味が全くしない養殖魚」もきっとあるんだろうな。漁獲量がどんどん少なくなっている現在、養殖魚の必要性は益々高まっていくので養殖業がんばれ。

ただし、天然ものが必ずいいわけではない

ここ、重要です。

私が毎日河岸に行って自分で魚を選ぶのはこのためです。ただ「テンネンモノ」でさえあればいいのなら、今どきはメールでもファックスでもいいわけでさ。

同じ季節、同じ魚種、同じ鮮度の魚でも、味が良いのもそうでもないのもいて、その差は結構はっきりしてるわけ。「そうでもない」は簡単に言うと「無味に近い」と言っていいと思う。

「養殖」vs「天然」はもう超分かりやすいけど

「良質な天然」vs「そうでもない天然」も結構はっきりと出ちゃったりするんだなこれが。

「天然だけど別にそれほど美味しくない。ていうか味なくね?」

という魚は、鯛でも平目でもけっこう多い。総じて痩せてるやつ。

ただ、「養殖のあの味」がする天然魚はまずいない。天然魚にゼロはあるけどマイナスはない、って感じ。

ちなみに釣った魚でも、近くの養殖生け簀からの『逃亡者』とか、生け簀から流れてくるエサのおこぼれにずっとお世話になってる『拾得物横領犯』のお魚はやっぱりあの味がするし、心なしか目つきが悪いし何か顔に生傷があったり妙にソワソワしてて、近づくと軽く逃げそうになるからすぐ分かるけど、それはまた別のときにね。

で、話を戻すと、天然でもちゃんと選ばないと本当に美味しい魚には出会えないんですよ、ということ。

下手くそなくせに釣りが好きで船釣りによく行くけど、自分の店でお客様に出したいと思う魚には殆ど出会えません。釣りたてバリバリの天然の魚でもダメなものはダメ。

相手がスラっとやせてるからって嫉妬してんだろって、んなことないってば。

だから「養殖も天然も変わらない」という人の言い分も分かる

味のない天然ものを食べて「別に」と思った人が仮に、養殖魚の味も気にならない人だとしたら、両者はどっちでも

「おなじじゃね?」

となるのも頷けます。養殖のあの味が気にならなければ、どちらも「うま味に乏しい」という共通項をもっていて、あとは大して違わないってことになる。

「いやいや養殖は締まりがない」

と言うだろうけど、締めたての魚は養殖ものでもプリプリでゴリゴリです。養殖の味に気づかない人が、締めたての魚の刺身を食べたら天然ものと思うんだと思う。

天然ものでも質の良さと食べるタイミングが必要

上質な天然の魚の、締めてから数日寝かせたあとの、あのうま味は、本当に素晴らしい。

脂がしっかりあるのに嫌な味がなく、噛んでるとあま味というかうま味というか、幸せな味がどんどん広がってきて、飲み込んだ後も口のなかに美味しさが残っていて後を引く。

思わず「あー幸せ…」

「幸せ!!!!!」

じゃなくて

「シアワセ…。」

そんな感じ。

思い込みとか、老害、とかイメージだとかいう事ではなく、エサだの運動量だのといった背景をすべて無視しても、やっぱり全然違うわけ。

知ってしまった幸せは感じつつも、知ってしまったがゆえに、お手頃価格の養殖魚を食べられなくなってしまったという軽い悲劇にも直面してます。

仮に質問者の方の主張がもし通ったら、養殖と天然の魚の価格が逆になるわけで、これはもう

「ぜひそうなってほしい!!」 

というか、それは本当に素晴らしいこと。

なので今までの文章は全部撤回すべきなのだとここまで書いてやっと気づいたぜい。

 

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