Quoraに勝手に答えるシリーズ第7弾

寿司学校で教えていたころ

生徒さん達が、アルバイト先についての会話で

「あの店は教育システムがしっかりしている(からよい職場だ)」

とか

「あの店は「仕事は見て覚えろ」というタイプの店だ(からダメな職場だ)」

みたいなことをく話していました。

寿司学校に入学する人はみな

「実店舗での修業」と

「お金を払って学校で習う」

を一度は天秤にかけ「学校で教えてもらう」を選んでこの場にいます。

そんな生徒さん達にとっては、

「目で盗め」がダメで「教えてくれる」がマルなのは

まぁ当たり前の感覚なのでしょう。

ただ私の心のなかでは、

「鮨職人」という、寿司のプロになろうという人が「目で盗む」ことを否定するかのような

感覚を持っていることに何とも言えない危うさは感じていました。

『目で盗め』の意味

「目で盗め」=「お前には教えない」

と思っている人が意外に多いのに気付きました。

そんなことはない。

遠い昔はそんな職人も沢山いたかもしれないけど

今の時代そんな人はほとんどいないんじゃないかな。

少なくとも私が知ってる鮨の職人さんは皆さん教えるのが大好き♡

「目で盗め」ってのはね

「オレのマネしろ」って言ってるんですよ。

真似してやってみて手直ししてもらうのが一番早いもの。

『学ぶ』の語源は『真似ぶ』だと中学時代に教わったでしょ。

何となく見るのではなく、真似ることができるくらい真剣に見ろと。

真似るためにはそれこそ穴が開くほど見る必要がある。

持久的な集中力も必要で、目的意識がないと中々続くものではないです。

でも結局これが一番近道。

野球のバットを持ったことがない人に、バットの振り方を教えるのに一番の近道は

振ってみせること

でしょ。

『目で盗む』とはハングリー精神の表れ

街を歩いていてイケメンとかキレいなお姉さんがいたらつい見ちゃうでしょ。

人間興味があるものは目で追うものなんです。

職人だってゴルフだって絵画だって同じ。

自分が上達したいと思っているならば

上手な人がそれをやっていたら見ずにいられないし

見ていて「あっ」と思うことがあれば

質問したり真似してみたりするもんでしょ。

いつまでたっても上手に魚をさばけない人や

巻物をパンクさせちゃう人が

すぐ横で先輩がそれをやってるのに見もしないってのは結局

「上手になりたいと思ってないんじゃないの?」

って話しなんよ。

求めてないものをあげることはできない

「ボケっとしてないでオレの手元を見てろよ」ってのはね

「教えてもらう準備ができてるかハッキリさせろ」ってのと同義なの。

準備ができてるなら仕事しながら解説もしてあげたいけど

興味がないヤツに教えても覚えてもらえないからバカバカしいからやめよう

ってなるわけ。

逆に、手元を真剣にジーーっと見てる若い衆がいたら

なんとかして教えてあげたいと思うのが人間てもんだ。

教える側にスキルを要求するってのは順序が逆ってもんだよ兄さん。

ヒットが打てないのをコーチのせいにするやつ

「教えるスキルがないのか?」という質問でした。

「スキルがないんでしょ?」と言わずに

「スキルがないだけですか?」と言うところがこういうヤツきらい。

何ていうか、慇懃無礼って言うんだよねこういうの。

「おまいさんが上達しないのはおまいさん自身の問題だタコ坊主。自分がダメなのをコーチのせいにするってのは野球選手としてどうなんよ?」

って思うけど別にこの人野球選手じゃなかったな。

まぁそもそもの話

マニュアルや動画で教えられるようなモノは職人の技ではないのよ。

動画や文章や口頭では伝えられない「感覚的なモノ」を磨いて手にするのがつまり

職人技なわけで

身につけるにはやっぱりそれなりに時間がかかるわけ

そんな何年もかけて手に入れた技術を教えてもらおうって時に

「教えるスキル」なんて言葉を軽く出しちまう感覚からして

まずは考え直した方がいいよ、てのが今回の答えだっての。