店主の気迫が感じられる店が好きです

食事の場に「気迫」なんてちょっとちょっとと思いますね

気迫って言っても大将が怖い顔して

「渾身の中とろです!!ウオーッ!!」

とかやってる店を言ってるわけじゃありません

むしろその逆

お客様を緊張させない雰囲気がありながら

何とも言えない自信に満ち溢れているというか

大将の一挙手一投足に風格のようなものが感じられるお店ってことなんです

上手い言葉が見つからないけど

それは多分、一人の職人の、この仕事にかける気迫の現れなのだろうと思うわけです

目に見えない水面下の努力

「気迫気迫って今どき根性論かよ」

「ちげーよ」

「精神論かよ」

「精神論だよ、わりーか」

鮨職人に限らずですが

およそ職人ってやつはお客様の前では楽しそうにやっていても

その裏には凄い量の努力と勉強が積み重なっています

誰でもまぁやっていることですが

「勉強」「研究」の名のもとにネットで情報集めるのと

本当の意味で自分の世界を築こうともがく人では

身に纏う雰囲気も、そりゃ違ってきてあたりまえ

謙虚に穏やかに仕事していても

ふとした会話や仕草に「おー」ってやつが出るんですな

結構さりげない感じの店や大将に多いですね

積み上げてきたものに自信があるので

あえてかっこつけたり構えたりしない

そんな店に出会えたときに

「ああ、ここにもプロがいるな」

と自然に頭が下がる思いがするわけです

その逆のお店もまぁあります

逆、というのは

「お金かけて高級な雰囲気の店つくってもらったけど働いてる人が…」とか

「高そうな白衣着ていっぱしの”匠”を演じてるけど出してくる食べ物がなぁ…」とか

まぁカッコはいいけど中身アレなお店のことです

本人はそれなりにキメてるつもりみたいだけど

見る人が見るとそりゃ見えちゃうわけでさ

商売のための舞台装置だとしても

「すし職人」を名乗るのはどうなのよ?とちょっと思いますこういう方々

勉強を疎かにせずやっていきたい

ただね

今は実力が伴わなくても

休日や休憩をわすれて仕事に没頭できてる人は

いつか必ず”その域”に入ってくる思うし

そういう人は、今は実力が伴わなくても

既に”いい感じの雰囲気”をまとってるんだなこれが

店にお金がかかってなくても

高い食材使う余裕がなくても私たちはそんなところは見ないわけ

だってそれは仕方がないことだからですね

見てるのはそこじゃない、その人間そのもの

だから若い人には本当に頑張ってほしい

ライフワークバランス、なんて要らん言葉は忘れてよし

「自分の全部」をつぎ込んでこの道を進んで欲しいと思います

偉そうに言ってるけどアタシだってまだまだ勉強が足りなくてね

こう書いてきて

「じゃあおめーはどうなんだ」

って、いまあなた絶対思ってるでしょ

「オウオウどうなんだ?」って聞きたいんでしょ

どうぞ聞いて下さい

急に用事思い出して裏に引っ込んじゃいますから

んでずっと出てこないの

人の振り見て我がふりなおせって言うけど本当でね

アタシの店に満ちてるのは

しょうもない親父ギャグでそこにいる全員が凍りつく真冬の空気感だっての

いい年こいてまだ勉強中ですって恥ずかし気もなく言えるのは

やっぱり本当に修行が足りないと自覚してるからなんですよね

まぁそんなわけではい、明日もがんばります。